静かなるオリンピックの船出

史上初の「無観客での開幕」

 昨夜、第32回夏季オリンピックとなる東京大会が開会しました。COVID-19禍からの復活を印象付け、完全とはならずとも観客を入れるはずだった大会は、結局ほぼ全てが無観客で行われることになりました。
 場外では開催に対する抗議活動も行われるなど、歓迎されるべき「スポーツの祭典」 が日本における「分断」の象徴となってしまいかねない状況は解消されぬまま開会式を迎えました。こんな形での開幕を誰が望んだでしょうか。「1年後には鎮圧出来る」との楽観は日本の関係当局の首を絞めました。その成れの果てが誰もいないスタンドでしょう。

選手は一切責められない

 それでも、批判の矛先が選手に向くことはあってはなりません。「中止せよ」と言わなかった選手は唾棄すべき、との論を振りかざすことは、準備に取り組んだ選手を冒涜するものと言えるからです。批判されるべきは1年延期後の対応のまずさが目立った大会組織委、政府の方です。
 準備したにも関わらず、音楽担当だった小山田圭吾氏と開会式の演出担当であった小林賢太郎氏の過去の不適切発言が直前に発覚し、それぞれ職を辞す結果となりました。これも大会を実行する側の「身体検査」不足が招いたものです。

 大会の船出に水を差されましたが、女子ソフトボールの連勝発進、U-24男子のサッカーでは初戦の南アフリカ戦で白星と、早速選手団はオリンピックのスタートを良い形で切りました。今私に出来ることは、無事に選手がパフォーマンスを発揮できるように、ということ1点のみです。

COVID-19は変わらず深刻

 他方、大会関係者の感染、選手への感染も判明している他、ホストタウンの東京の足元の感染状況は深刻なままです。

 連休開始で検査数が落ちたこともあってか、対前日比では少ない値ですが、先週金曜より増加した値です。休み明けの月曜日以降、さらに増加すれば医療のパンクは避けられなくなります。ワクチンが出回らない50代以下での感染者増が顕著であり、都によれば、22日現在での陽性率(7日間平均)は12.2%と厳しい状態です。京都大の西浦教授が示したシミュレーションのはるか上を行く深刻さを今後呈するのでは、と強い危機感を覚えます。そうなれば、兵庫県にも緊急事態宣言が発令されるのは時間の問題となります。果たして今後はどう推移するでしょうか。

「反マラソン大会」が強まる懸念

 オリンピックがもたらした分断がさらに顕著となれば、「スポーツ」それ自体が「不要不急」と見なされ、「マラソン大会は即時中止せよ」との強硬論に傾く可能性があります。

 特に、東京マラソンは「オリンピックのレガシーを」と意図したこともあり、本年の大会は25000人で10/17に実施予定です。ここへの風当たりは極めて強くなると言えます。感染状況が落ち着けば最良ですが、そうでなければあっさり中止に追い込まれ、ランナーの失望を買うことが懸念されます。ならば最初から「数を大きく絞ります」と宣言するのが筋では、と思います。

 今はただ、オリンピックとパラリンピックが9月につつがなく全日程を終えること、それに尽きます。