2021年度のマラソン・ランニング界を見通す

新年度のマラソン界の見通し

 2020年度は、COVID-19の拡大によりほとんどのマラソン大会が中止に追い込まれました。この流れは新年度も続き、既に4月のかすみがうらマラソン、長野マラソンの中止が決まっています。また、'20-'21シーズンを締めくくる5月の黒部名水マラソンも11月末まで半年余り延期されることとなりました。
 中止、延期の流れは今後も続いていくことは不可避であると言えます。練習時間はたっぷりですが、モチベーションを繋ぎ止める大会の存在が次々目の前から消えることは堪える面があるのは否めません。そして、COVID-19ワクチンは未だ高齢者への接種が始まる見通しが不透明であり、集団免疫獲得までの道は遠いままです。

「コントロール不可」という恐るべき事態

 他方、直近のCOVID-19の感染拡大傾向は止まりません。「ピークから8割抑えたから緊急事態宣言を解除します」と解除に踏み切った結果、すぐにリバウンドしています。先行解除された近畿地方の2府1県も再拡大に転じました。

(出典:兵庫県HP 新型コロナウイルス検査・陽性者の状況)

 山が下がり切る前に宣言を取り下げた結果、すぐに反動が訪れています。宣言解除は「GOサイン」でない、と専門家の先生が述べても、そのメッセージは結果的に「GOサイン」になってしまっています。その帰結として、COVID-19の再拡大がもたらされました。
 これを繰り返すと、「感染者数ピークがますます上がる」となり、いくら割合を削っても数が減らず、リバウンドと爆発がすぐ来る、という状況になることは火を見るより明らかです。いずれ、事実上の「アンコントローラブル」(制御不可能)宣言がどこかから出てもおかしくないでしょう。そうなれば大会どころではなくなってしまいます。

予定大会は一気の参加料値上げに

 他方、名古屋ウィメンズマラソンが参加料26000円で開催したこともあり、今後予定される大都市大会が一気に参加料値上げの嵐となっています。一例は次の通りです。
  • 横浜マラソン2021(10/31) 23000円
  • 金沢マラソン2021(10/31) 16000円
  • 富山マラソン2021(11/7)  12500円
  • おかやまマラソン2021(11/14) 14000円
  • 第10回神戸マラソン(11/21) 19500円
 この中では、11月7日の富山マラソンが良心的な12500円(応援枠は15000円)との設定ですが、横浜・神戸の両都市マラソンは2万円を用意しないとスタートラインにすら立てない、という状況になっています。
 現時点では地方都市の大会も開催予定が立っており、価格としても良心的ですが、影響が長期化すると、「大会は役割を果たしたし、COVID-19対策が厳しいので廃止」と決断するものがある可能性は排除できません。しかし、これまでのように、1万円以内の参加料で参加出来る大会は消えていくのではないかと感じます。

 COVID-19が収束しても地方の大会が復活せず、大都市大会に人気が過度に集まる場合「大会難民」発生をきたしかねません。結果、需給バランスが崩れて「参加料の高値安定・さらなる値段釣り上げ」も発生するのではないか、と見ています。「都市型フルマラソン1本3万円時代」も覚悟しなければなりません。もちろん、その懸念が空振りに終わって欲しい、と願うばかりです。

ランニング文化の生死を左右する1年か

 COVID-19の影響は1年以上の長きに亘って、マラソン界に深く影を落としています。ここで大会が消え続けることが続けば、ランニング文化の凋落はさらに進んで行きます。灯を守れるかは、個々のランナーのCOVID-19への態度も関わります。健康増進のためのツールとしてのマラソン、ランニングが末永く、日本の津々浦々で息づくことが出来るかどうかを占う1年になる、と感じています。私自身も襟を正し、地道に腐らないように歩んでいきたいと考えています。