マラソンは「貯金」を作るべきなのか

「3時間の壁」との戦いを振り返り

 フルマラソンで「サブ3」「サブ3.5」「サブ4」というのは、市民ランナーであれば多くの人が目指す目標値として掲げるものです。
 特に、3時間台前半、3時間15分を切る辺りからは、市民ランナーのステータスたる「サブ3」を目指し、貪欲に練習の質、量を高めていく人は少なくありません。

 私も2019年の奈良マラソンで3時間2分49秒のPBを出し、「次はサブ3」と見据えて練習量を増やし、翌2020年、練習開始から足掛け2年8か月で3時間の壁を破ることが出来ました。その間の練習は辛いこともありましたが、壁を打ち破れたことで、練習の辛さが多少報われたのかな、と思っています。

大会後、聞こえる声を拾って思うこと

 3時間の壁はある種紙一重の勝負です。そんな中、SNS上の声を拾うと、「貯金を作ったけど撃沈してしまった」という声は大会がある毎によく目にします。
 その度、私は「貯金を多めに作って後半粘るレースが本当に推奨出来るプランなのか」ということを常に考えます。
 例えば、サブ3を目標とする人が、中間点を85分で折り返すことを想定します。この時、後半を95分で粘ってちょうど3時間ですが、ハーフのPBと比較しての余裕時分が少ない場合、30km以降一気に溜まったダメージとの戦いに巻き込まれ、ペースを崩す原因になるかもしれない、と考えています。そうなると、10分積んだ貯金は一気に崩れてしまいます。

「イーブン」を狙う戦術

 一方、「ネガティブスプリットは現実的でない」と唱える人も少なくありません。

【記事】ネガティブスプリット=非現実?(昨年7/8付投稿)

 主張を読むと、「30km以降は誰だって溜まったダメージでペースが落ちる」とのこと。だったら貯金を作りつつソフトランディングを狙え、とありました。私は、「マラソン=ダメージコントロール競技」と思っています。如何に30kmまでダメージ少ない状態で移動し、そこから力をぶつけられるかが勝負、ということです。

 前回のトライアルマラソンもハーフのPB、84分10秒から5分程度余裕を持って中間点を通過し、後半に勝負をかけて行きました。その結果としてネガティブスプリットになりましたが、この時も「なるべくイーブンペースで30kmまで走ろう」と考えていました。

 サブ3であれば、「2時間58分目標」と据えてハーフを88分ぐらいで通過(大会だと応援に応える余裕がある、と感じる位のペース)して行けば、ダメージを抑えながら後半に勝負出来ると考えます。誰もがきつい後半、前の選手を捉えることは自身を鼓舞してくれますし、気持ちも乗るので良いモチベーションの中で走り続けられる、そんなメリットがあります。
 もちろん、「貯金を作るな」とは申しません。ですが、前半から記録を狙って突っ込む必要は全くないと考えます。これはあくまで私見ですので、皆さんからのコメント、見解を待ちたいと思います。