「エリートのみ」への分断進む

大阪マラソンの一般ランナー締め出し

 来週27日に開催予定の大阪マラソンは、16日付で「一般ランナー部門中止、エリートのみ開催」を示しました。その少し前に、吉村大阪府知事が「一般ランナー部門を取りやめる」との意向が報じられ、開催まであと僅かの段階での急激な方針転換に、練習を積んだランナーから怒りの声が上がりました。
 2020年も同じように「直前中止」が言い渡される大会があったから、別に決断はギリギリでもいいよねとする向きがあったのでしょうか。あの時は突発的な事象ゆえにやむを得ませんでしたが、フルスペック開催が困難だと分かっていながら何もリリースせずに突然方向性を出したのはあまりにお粗末と言えます。

東京マラソンは「検査必須」で開催も

 他方、翌週の東京マラソンは出走予定全ランナーにPCR検査受検を参加条件に定めました。ワクチン接種が進まない以上、この措置は妥当ですが、陰性証明のためにキットを用立ててここにリソースを割くことへの批判があるのも事実です。
 開催実績を積めることは前向きに捉えますが、批判も強い中で押し切ったことが今後どう出るか、マラソン界の行方にも関わる判断だったと言えます。

「エリートのみ」の弊害を考える

 しかし、大阪マラソンから一般ランナーを締め出したのは事実です。ならばエリートになるべく努力をすれば良いじゃないかと言っても、そのための舞台すら与えられていません。これでは枠を既に持つ人しか走れないままです。
 ましてや、TV等で名の知れた選手が出ない地方の大会ともなれば陸連もほぼ関知せず、「勝手にやってくれ」の状態です。地方の大会があることがマラソン界の多様性であり、エリートが走るか否かで線引きされれば、スタートラインに立つには都市型大会の僅かな椅子取りゲームに勝つしかありません。これが望ましいとは言えないと考えます。

 COVID-19が去ったとしても、未知なる感染症が襲う事態は十二分に想定されます。「エリートのみ」でやったことにせず、感染症その他の危機に強い大会が開ける手段を今後1~2年で創り上げられなければ、マラソン界は終わるとの危機感が必要ではないかと思います。